はじめに
2025年以降のゲーム産業は、次の3ベクトルで“ルールが書き換わる”移行期に入っています。
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地政学的資本の台頭:サウジアラビア(PIF/Savvy Games Group)を軸に、eスポーツのインフラ支配からコンテンツIP支配へ。EA買収検討の報道・観測は、その象徴的シグナル。
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AIと次世代ハードでの“性能乗数化”:生成AIが開発コストと期間を軽量化。PS5 Proに代表されるAIアップスケーリングは消費側でも必須のインフラへ。
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開発モデルの再編:インディー革命:AAAの高コスト・高リスク化を受け、AA~インディーへの投資・評価が加速。アジャイル/早期アクセス/ライブ運用前提の“中間領域”が主戦場に。
プラットフォーム横断では、モバイルIPの強さが継続する一方、Netflixなど非ゲーム勢のライブスポーツ独占で、ユーザーの“総可処分時間”争奪がメディア横断戦へ拡大。M&Aは強いIPとAI技術の獲得を中心に活発化します。
1. マクロトレンド(2025→2026):何が変わるのか
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M&A活発化:開発費の高騰・市場飽和を背景に、IP・AI・XR関連の“時間短縮テクノロジー”を求める統合が進む。
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XR/メタバースの再浮上:若年層の利用拡大+生成AIの登場で、制作コストと参入障壁が実質的に低下。B2Bのデジタルツイン知見がゲーム側へ逆流。
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コンソール競争の論点転換:CPU/GPUの純物理向上から、AIレンダリング&アップスケーリングで“2~3世代分をソフトで稼ぐ”時代へ。

性能は“足し算”から“掛け算”へ。AIがあると無しで、企画もコストもぜんぶ変わる

IPの価値はゲーム外でも拡張。Netflixのスポーツ独占は“時間の奪い合い”が本格化した合図だね
2. 5つの変革軸(業界地図を塗り替えるコア)
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地政学的資本によるeスポーツ再定義
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生成AI/XRによる開発効率ブレイクスルー
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PS5 Pro等でのAI活用=“性能乗数”の明確化
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AAAリスク回避→AA/インディー台頭(インディー革命)
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プラットフォーム境界の消失(ゲーム×配信×スポーツのクロス)
3. eスポーツの地政学:サウジ主導の垂直統合
3-1. 「eスポーツ国家」戦略の骨格
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Vision 2030の下、グローバル・ゲームハブ化を国家戦略に格上げ。
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Savvy Games GroupがESL/FaceIt/Vindexを傘下化し、運営・配信・ルール策定までのインフラ主導権を確立。
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育成プログラムや国内開発のローカライズでタレント/スタジオの土台を造成。
3-2. コンテンツIPへの資本シフト
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国際大会の規格化(ワールドカップ化→五輪への接続を模索)。
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コンテンツIP買収検討(EAの件など)=インフラ支配→IP支配の流れ。
→ 結果:運営・規格・IP選定まで“垂直統合”が視野に。地政学的意図が市場形成を左右する新フェーズへ。
3-3. “勝てる条件”の更新(アクセシビリティ革命)
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クロスプラットフォーム+F2Pがプレイヤーベース拡大の決定打。
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専用ハード依存から脱し、参入障壁を極小化できたIPがeスポーツ化の最短ルート。
実務メモ
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競技化を狙うタイトルは、クロスプレイ/F2P/低スペ推奨を企画要件に内包。
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投資はインフラ側(大会運営)+IP側の“両睨み”。規格標準化の波で二極化が進む。
4. 技術革新:AI×XRが作る“開発革命”と“描画革命”
4-1. 生成AIが変える制作現場
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アセット生成/スクリプト/QAの自動化で工数・費用を圧縮。
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XR/メタバースの試作→検証→拡張のPDCAが週次で回る現実へ。
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産業XR(デジタルツイン等)の知見がゲームのUX/最適化へ還流。
4-2. 消費側:AIアップスケーリング=“性能の壁”突破
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PS5 ProがAIアップスケーリングを標準装備へ(AMD協業)。
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Xbox陣営もAI活用を加速。高解像度×高FPSの両立がAI前提に。
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もはや“画質の良さ”はハード性能だけでなくAIパイプラインの完成度が決める。
実務メモ
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開発はAI前提のツールチェーン(生成→人手仕上げ→自動QA)を敷く。
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発売後の最適化はAIアップスケーリング/フレーム生成/遅延低減を“パッチ戦略”として企画段階から織り込む。
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5. 開発エコノミー:インディー革命とAA主戦場化
5-1. AAAの“縮小均衡”とポートフォリオ再編
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長期×巨額=失敗時リスク大。各社はスコープ縮小・俊敏性重視へ。
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AA(中間領域)が新しい量産型フォーマットに。短期開発×中価格×ライブ運用の“勝てる型”。
5-2. インディー繁栄の構造
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プレイヤーは“既視感”に飽和、ニッチ×ユニーク体験へ回帰。
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成功インディーはM&A/パブ契約の一等地へ。
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早期アクセス→継続改善のアジャイル運用が市場の標準語になる。
実務メモ
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スタジオは試作→指標→Go/No-Goの速度をKPI化。
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成功確率を上げるにはAA×シリーズ化で“学習の複利”を回す。
6. プラットフォーム戦略:境界の消失とIPの寿命延伸
6-1. 日本:モバイルIP優位の持続
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既存大型IPのモバイル再構築が“最小リスク×最大収益”。
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市場の上位は既存IPで占有され、新規IPはニッチ×SNS波及から攻めるのが定石。
6-2. コンソール×モバイルのハイブリッド運用
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任天堂に代表される長寿IPの多面展開(コンソール本編×モバイル補完)。
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“世代を跨ぐ認知”を維持し、IPの寿命を延ばすメディア設計が鍵。
6-3. メディア横断の大競争:時間の奪い合い
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Netflixがライブスポーツ独占を拡大し、非ゲーム勢も総可処分時間を狙う。
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ゲーム側はプレイ時間+視聴時間+コミュニティ滞在のハイブリッドで“面滞在”を最大化。
実務メモ
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IPは“ゲーム単体”で見ない。映像/ライブ/グッズ/UGCまで含めたLTV設計で勝負。
7. 具体的アクション(職種別ロードマップ)
7-1. パブリッシャー/経営
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AA・インディー軸の新規枠を年次ポートフォリオに固定(3~6本/年)。
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M&Aスカウティングは“AIツール資産/工程自動化力/短期KPI達成力”を重視。
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eスポーツ企画はクロスプレイ×F2P×低スペ対応を前提化。
7-2. スタジオ(開発)
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生成AI→人手仕上げ→自動テストの三層パイプラインを整備。
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早期アクセスで指標(リテンション/課金/UGC)を月次レビュー、3か月で方向修正。
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コンソールはAIアップスケーリング対応を初期設計に。
7-3. 個人クリエイター/インディー
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小スコープ×強いコア体験で“試遊30分の熱量”を最大化。
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無料体験版+ウィッシュリスト増加KPIを運用。
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SNSは開発ログ(Devlog)+縦動画に注力して“発見可能性”を高める。
7-4. 投資家/事業開発
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テーマは「AI制作ツール」「AA量産型スタジオ」「クロスプレイeスポーツ」
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リスクは地政学×独禁対応。インフラとIPの垂直統合動向を常時モニター。
8. 2025–2026年の見取り図(まとめ)
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技術:AIが“開発コストの分母”と“描画性能の分子”を同時に押し上げる。
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資本:国家資本がeスポーツを規格化し、IP選定まで影響力を拡張。
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開発:AAA一極からAA/インディー多極へ。アジャイルが標準化。
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流通:モバイルはIP再構築で強固。ゲームはメディア横断の時間争奪戦へ。

“小さく作って早く当てる”。そしてAIで磨いて育てるのが新常識

IPは遊ばせるだけじゃなく“観る・語る・作る”まで含めて寿命を伸ばそう。次の勝者は“時間の設計者”だよ


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